2017年07月06日

日EUのEPA大枠合意のすごさと今後の課題

日EUのEPA(経済連携協定)の交渉について、大枠合意を目指しているとの報道がありました。


このニュースを見て、交渉状況を見て、過去の他のEPAと比べても、著者の見立てでは、ここから、あと5年はかかると思いました。
この手の交渉は、ほとんどの分野で終わっていても、特に終盤に少ない分野において妥協が見込めなかったりして、大枠合意までものすごく時間がかかるのが通例です。
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ところが、先ほど大枠合意が宣言されました。これにはびっくりしました。
正直速すぎて、心配です。関係者は、あらためてちゃんと内容を精査したほうがいいです。
今回は、早く大枠合意に至らせたかった要因も多くあったため、こんなに早く実現できたとも思います。
安倍首相のリーダーシップもあり、外務大臣を含めて、関係者がEUに出向いたのも大きいと思います。
安倍首相は、こういう政治主導を続けてくれるといいですね。

さて、今回は、交渉が速く進んだ理由・すごさと、今後の課題などを書いていこうと思います。

1 日本もEUも成果を出すために超急いでいた
安倍政権が、内政の失策、経済の停滞を外交で取り戻そうとしているとみられます。
また、EUも英国離脱により、急速に求心力を失いつつあります。
日EUのEPAが合意すれば、両方の経済が上向き、米国や中国にも自由経済発展に向けた圧力がかけられる、という意味で、政治的な狙いが一致した、非常に画期的な合意だと思います。
本来なら、自動車、チーズ、政府調達などまだまだ難しい案件が目白押しで、とてもすぐに合意できるフェイズではなかったと思います。今後内容の精査により、問題もある程度は表面化してくると思いますが、多少の問題があってもこのタイミングで踏み切れたのは非常に大きいです。
どうしても問題があれば、後から対応すればよいと思います。

2 内政に関しては、自分たちが主導になって決められても、外交は、相手があります。しかも、日本よりもEUはまだまだ強いです。そのEUとの交渉は一筋縄ではいきません。
 これは、ある意味当たり前の話ですが、日本はEUという国と交渉しているわけではありません。
EUの後ろには、多くの国々が控えています。当然、それぞれの国が主張をしております。
日本の立場から見れば、自動車の関税を下げてもらう代わりに、チーズの輸入をみとめよう、なんて考えていると思いますが、EUからみれば、自動車の関税を下げないのはドイツの要望、チーズの関税撤廃はデンマークの要望だから、どちらものんでもらわないとすぐには締結できないよ、となります。
EUが強いとは言っても、実際に影響を受けたり、煮え湯を飲むのは個別の国です。
日EUというと、二国間交渉に見えますが、EUとの交渉は実際には多国間交渉であり、二国間の交渉よりもずっと時間がかかります。
それが、こんなに早く妥結したのは、政治的に日本もEUもかなり強権発動した、ということです。
新しい会議とか何かをはじめるのですら、そこまで簡単ではありません。
ましてや、利害が絡むEPAは外交交渉の中でも難しい部類です。十分安倍政権の成果といっていいと思います。まぁ、自民党の票につながるかどうかはわかりませんが。でも、票につながらないけど、こういう動きが本当は大事です。票につながらないからといって、外交をまったく重視しない政治家が多いのは日本の問題点の一つです。
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3 個別案件の今後の課題について
@政府調達
大きな政府調達案件としては、水があるでしょう。水メジャーを持つフランスが国を挙げて水を売り込みに来ているので、地方の公共事業などでもフランスが参加できることを求めてきているでしょう。今後の水民営化の議論と含めて、これがどうなっていくか、注視する必要があります。日本の水は外資企業が適切に運営する形になるのでしょうか?できるのでしょうか?
大変危ない水道民営化、問題点と方向性を探る

そもそも日本の公共事業の政府調達はどうなるでしょうか?
例えば、今後、築地にテーマパークを作る際には、EU企業が落札するなんてこともありえます。

Aデータプライバシー規則
EUでは、EUの規則において、厳格な個人情報の取り扱いを規定していて、日本は、EUと同等な国だと認められていません(日本も大きく改善したが、まだまだ今後しばらく難しい。)。そのため、EUで使う個人情報のデータは、EU内にデータセンターをおいて、処理している業者が多いわけです。じゃあ、具体的にどこにおいていたかというと、日本で、EUに進出する時には、英語が使える国であるイギリスに置いていたわけです。ところが、イギリスはEUから外れます。そこで、EUに進出している日本企業は、EUに進出する際には、データの置き場所を変えなければならなくなりました。これが、どうなっているか。これが、仮にEPAで担保されていないのであれば、EPA後の課題になります。個人情報を一切取り扱っていない企業はあまりないはず、今後AiやIoTを使い始めればさらに少なくなるはずですが、日本企業はEUで十分に活動できるのでしょうか?ここで詳しくは述べませんが、取扱いを間違うと、何十億円もの課徴金を課される可能性があり、ただごとではありません。

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B自動車
自動車の輸出と輸入に関する関税は撤廃されていくようです。韓国車がEUに進出する一方、後塵を拝していた日本車が反撃するチャンスです。日本は、対アメリカで今後輸出を減らさなければならない可能性があります。輸出先の多様化は必須です。果たしてEUでの日本車の売れ行きはどうなるでしょうか。
また、EU車も日本で安くなります。これらを買う人も増えるはずです。これらは日本の消費に良い影響を及ぼすでしょうか。

C農産品
農産品の輸入量はそれなりに増えるでしょう。しかし、日本の農家にとってそこまで脅威かといわれると疑問が残ります。ジャンルによる、というべきでしょう。
なぜなら、農産品は、新鮮度の点でも、送料が安いという点でも、地産地消がそこそこ優位性を持ちます。関税が0になっても、優位性が減るというだけです。
チーズなどの加工品など、比較的高級な商品には影響が出て、少しは安くなるでしょう。これと、日本のブランド製品が対抗することになると思います。
つまり、成城石井などの高級スーパーの値段は下がると思いますが、近所のスーパーの野菜には、そこまで影響がないのではないか?ということです。この点で、比較的近いオーストラリアや近隣アジアとのEPAとは違い、農家や消費者などへの影響も限定的だと思います。

DEUの地理的表示保護制度の話
シャンパンって、本当は、シャンパーニュ地方で作ったものしか、シャンパンってよんじゃいけません。
ビールって、100%麦芽のものしかビールって呼んじゃいけません(ドイツ)。
EUには、こうした規制が多くあります。例えば、日本からEUに輸出する時は、プレミアムエビスはビールとして売れますが、いくつかのまぜものをしているビールはダメなわけです。

また、日本の基準では、例えば、アメリカで仔牛を育てて、東京で生育すれば、東京牛、と名乗っても良いですが、EUの基準では、そんな適当なことは許されません。
こうした違いが結構あります。日本がうっかり、通常の基準でEUに輸出すると、EUからクレームが来る可能性など、問題になる可能性があります。
この辺りをどう切り抜けていくか。

などなど、EUとの貿易においては、相手が先進国であるがゆえに出てくる独自の問題点がいくつもあります。それは、発展途上国や、BRICSなど勢いのある国との貿易とは明らかに違い、EU独自の考え方、制度や慣習などについて、日本側がどう対応していくかということが多いですが、それは、日本側が随分と遅れているジャンルをしばしば含みます。これにどう対応していくか。

EPA大枠合意は大きな進歩ですが、それだけで自由な貿易ができるわけではなくて、ビジネスに際しては、まさにこれから問題が起こります。そうした問題をどう解決していくかにより、どの程度日EUのEPAにより、日本経済を活性化させられるかが決まります。

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