2017年03月31日

残業時間の上限設定と同時に、実質的な残業時間の実効性の担保を強く議論すべき

IMARIC20160805310323_TP_V.jpg

電通社員、高橋まつりさんの過労死などに端を発し、残業時間規制の議論が加速化しています。
現時点では、繁忙期の残業時間は月100時間ということで決着しました。が、個人的には、見た目の残業時間の多寡だけを議論すると、日本全体をみると、実際に困るのはむしろ労働者側だと思っています。


現在、残業時間月100時間まで、という議論は、ほとんど企業側が嘘をつかないという性善説に基づいています。残業についてきちんと考えている優良企業に対しては実効性を持つと思われますが、そうした企業は、すでに社員の残業時間の減少、負担の分散などをある程度考えているところも多いと思われます。つまり、そうした優良企業において、月100時間をこえて残業している社員は、もちろんいるものの、数は限られているのではないかと思います。

残念ながら、私の知る限り、多くの日本の業界・企業では、労働時間に関してモラルハザードがあり、サービス残業が常態的に行われている業界・企業も多く、そうした業界・企業においては、実質の労働時間が減らずに、見た目の残業時間だけが減り、残業代が減少するだけ、つまり実質賃金の減少といった結果だけを生む可能性が想定されます。

それどころか、現在優良な企業の中でも、今回規制が厳しくなることにより、今までは残業時間を管理し、残業代を支払っていたものの、どう考えても月100時間ではおさまらないため、今後は規制を守ることをやめ、残業時間を不正操作したりするようになる可能性もあります。


本来解決すべきは、働いている人の実質的な残業時間の減少ですので、名目的な労働時間の議論ばかりを先行させるのでなく、業界・企業のモラルハザードを抑制することに力を入れるべきだと思います。

そこで、ここでは、労働時間に関して、業界・企業のモラルハザードや残業時間を抑制するための方策を提案したいと思います。 
 

1 労働監督などに関する罰則規定などの大幅な強化

 労働時間の厳守について、まずは、実効性を担保することが大事だと考えており、労働基準監督署が今よりも頻繁に調査をすべきだと思っています。今は、内部などの通報などにより動く場合が多いと思われますが、内部の人は何も言わないことが多いため、積極的に事前通告なしで頻繁に会社を訪れるべきだと思います。仮に、毎回詳しい調査をしなかったとしても、来るだけでも悪質な企業にはプレッシャーになると思います。

 また、現在、労働基準法の罰則は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。これに対して、過労をもとに現在、うつ、病気にとどまらず、自殺、突然死など、人間の死に直結する事象は数多く起こっています。果たしてこれが釣り合っているのかどうかに関して私は疑問を持っており、この罰則規定の上限が甘いことが、モラルハザードが止まらない一因と考えています。少なくとも、労働に関して(関与が疑われる場合)人間の死が起こった場合、企業や上司などにもっと厳しい罰をあたえる可能性を広げたほうがよいと考えます。死が労働に関連するかの判定についても、標準的な要件が示されるなど、昔よりは改善されていますが、今でも、杓子定規な標準的な要件をみたさない場合、死と労働が結びつかないと判定されてしまうケースが多いとみられます。 今回の働き方改革については、労働時間の上限規制に罰則がつくという話ですので、注視していますが、この罰則が軽い場合には、結果として今までとあまり変わらないと思います。


 さらに、現在、残業ではないと整理しているケースが多いものの、仕事ではないかと思われるものは多数あります。今後、こうしたものが増えてくることを危惧します。たとえば、仕事でなく自主的な研修だとか、強制的な仕事でなく自発的に仕事をしているだけだとか、いったんタイムカードだけ押して残業を続けるとか、建物の電気は消えるがまたすぐにつけてこっそり仕事をするとか、仕事を大変多く家に持って帰るとか、仕事でないといいながら半強制参加のイベントなどがそれらにあたると思います。こうした時間が日本企業においては大変多い業種も多いです。近年は、会社にいる時間=残業とする傾向が多いとされるケースが多いようですが、いざ裁判となれば、その証明などから残業をしている労働者側がする必要があるなど、雇用者側が企業などを訴えるハードルはまだまだ高いです。

スポンサードリンク




2 そもそも、なぜ企業が残業を課すのか?

@仮に、企業が残業代を100%払っていると仮定します。
なぜ企業は残業を課すのか?
それは、極端に言えば、二人の人を雇うよりも一人の人に二倍働いてもらったほうが割安だからだと考えています。
簡略化した例をあげれば、人を一人を雇うと、
A採用や研修といった初期投資コストがまずかかり、次にB基本賃金や社会保険料といった基本コスト(一ヶ月あたりとします)がかかります。
加えて、C残業代(一時間当たりとします)がかかりますので、たとえば、一人の人が100時間残業する場合には、
一ヶ月あたり、A/(働く全ての月)+B(1か月分)+100Cがかかるわけです。
Aもそれなりに高いですし、Bも社会保険料などを含み、それなりに高いです。
また、業務が多いからといって、いったん人を雇えば、業務が少なくなったときに解雇すること、解雇しなければ雇用を維持することも大変であり、そのコストDも発生します。
それらに比べて、Cは、通常の給料といった比較的安いところから数十%増しといった程度に抑えられており、それが、AやBに比べて安すぎることから、企業にとって、新たに人を雇うよりも、残業を課すほうが効率的であるというインセンティブが容易にでます。
専門的な業務であればあるほど、このインセンティブは高まります。
派遣やバイトなどについては、正社員よりはA,B,Dのコストは低めですが、それでもやはりCの方が安いという結論になりがちです。

通常の労働時間に行うことが行いきれない業務の中には、他の人でもできる業務もあるでしょうし、そうでない業務もあるでしょう。
少なくとも他の人でもできる業務であれば、分担してやるべきだと思いますが、そういった業務も含めて、はじめにきめた割り振りどおり、その人に行わせてしまうことが多いため、残業時間がすごく多い人などが出ていると思います。
若干効率が悪くても、適していなくても、残業代は安いし、とりあえずやれ、というわけです。上司としてはこちらの方がはるかに簡単です。

Aこれを防ぐには、残業代を異常に上げ(残業時間が増えたときの傾斜を法的に今よりもだいぶきつくするのも一案だと思います)、その支払いをしないことに対しては企業などに厳しい処罰を課すことだと思います。
残業代を異常にあげれば、前述のA+B+DとCのバランスが崩れ、残業よりも人を新たに雇うインセンティブがでます。

新規に人がどんどん雇われれば、有効求人倍率があがり、労働条件を引き上げないと新規の求人ができないことから、日本全体として、低賃金の業界から順に、徐々に賃金が改善していきます。
賃金が改善していけば、会社としては、どうでもいいことを段々切り捨てていくか、付加価値を高めて、効率化していく必要がでてきます。
そもそも日本企業は他の先進国の企業に比べて、投下資本に対して利益率が低い、効率が悪いことがずっと問題になっています。効率性を改善しなければ、いずれ国際的な競争、他の国内企業との競争などに負けて企業がつぶれてしまいます。
 
現時点では、日本の管理者層は、仕事の割り振りや効率性の追求、新規に付加価値をつけることなどについて、とても下手な人が多いと思います。それどころか、人事上も無難にやることは評価しますが、それらの能力が適切に評価せず、そのためか、そもそも仕事を分担する、効率よくやる、新たに何かを生み出すことなどをそもそも考えてすらいない上司も多いと感じています。若いうちから管理者になる欧米のシステムが必ずしもよいとは思いませんが、日本の場合、管理者の平均的な能力が低すぎると思います。利益を生むためには何が必要であるかが必要であり、それ以外のことを延々とやっていては、企業はいつまでたっても非効率なままです。




残業時間の上限規制は、労働基準時間の厳守といった基本的なコーポレートガバナンス(企業統治)の問題ですが、それには、労働基準法の企業に対する実効性、が担保されなければなりません。そのためには、前提として、企業が今よりもずっと効率性を向上させなければそもそも余裕がなくて実現はできず、この問題の実効性の担保は相当闇を抱えていると思っています。

労働時間の上限規制の決定は、象徴的な意味はもつものの、実効性の担保にはまだまだ課題があるような気がしてなりません。

↓クリックいただけますと、励みになります。どうぞよろしくお願いします(^^)
このエントリーをはてなブックマークに追加

人気ブログランキングへ
↑今何位でしょうか?
にほんブログ村 ニュースブログ ニュース批評へ
にほんブログ村
↑こちらは今何位でしょうか?

スポンサードリンク






posted by newser at 18:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/448594643

この記事へのトラックバック