加計学園問題については、色々な論点から話がありますが、
最も大事なことは、加計学園が獣医学部を作れるのかどうか、というのは大きな流れの中の一部である、ということです。今回は、この流れを解説していきます。
目次
【1 文部科学省の歪められた告示】
【2 大学は、学部を自由に設立すべきなのか、これまで起こった話】
@薬学部 A法学部
【3 今後はどうすべきなのか、医師や獣医師の「需要と供給」とは何か。】
【4 これから加計学園問題はどうなるべきか】
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【1 文部科学省の歪められた告示】
まず、安倍首相達がやろうとしていることは、規制を排して自由な市場を作り、それにより経済を活性化する、ということです。
別に安倍首相達だけでなく、政府は長い期間をかけて、規制改革をしてきました。
元来、学部の設置については、全て認可制度でした。
平成16年に規制緩和があり、基本的には届出制度にしています(下に引用した告示の一年後から施行、一年間は準備期間)。これが第一弾の大きな規制緩和であり、獣医学部は第二弾になります。
ところが、第一弾の規制緩和に反対した人たちがいました。その反対した人たちは、
省庁(特に、政治家、文部科学省、厚生労働省など)に圧力をかけて、例外を作って、文部科学省の告示という形で規制を作りました。
それが、平成十五年三月三十一日文部科学省告示第四十五号の告示です。
大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準
(平成十五年三月三十一日文部科学省告示第四十五号)
第一条 文部科学大臣は、大学、短期大学及び高等専門学校(以下この条及び附則第二項において「大学等」という。)並びに大学院に関する学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号。以下「法」という。)第四条第一項の認可(設置者の変更及び廃止に係るものを除く。次条第一号を除き、以下同じ。)の申請の審査に関しては、法、大学設置基準(昭和三十一年文部省令第二十八号)、高等専門学校設置基準(昭和三十六年文部省令第二十三号)、大学院設置基準(昭和四十九年文部省令第二十八号)、短期大学設置基準(昭和五十年文部省令第二十一号)、大学通信教育設置基準(昭和五十六年文部省令第三十三号)、短期大学通信教育設置基準(昭和五十七年文部省令第三号)、専門職大学院設置基準(平成十五年文部科学省令第十六号)その他の法令に適合すること及び次に掲げる要件を満たすことを審査の基準とする。
一〜三(略)
四 歯科医師、獣医師及び船舶職員の養成に係る大学等の設置若しくは収容定員増又は医師の養成に係る大学等の設置でないこと。
これで、例外とされているのは、医学部、歯学部、獣医学部、船舶職員の学校の4つです。
もちろん、他の学部でも多かれ少なかれ反対はありましたが、例外にはなりませんでした。
そもそもなぜこれらが他と違って、例外になったのかということについては、十分な説明はありません。
例えば、薬学部だって、法学部だって、工学部だって例外にしたほうがいいという説明をしようと思えばできます。
結論としてこれらだけに例外=規制ができたのは、これらはほとんどが政治的要請、医師団体などの勢力の抵抗に基づくものです。これがそもそも間違っていたのではないか、というわけです。
【2 大学は、学部を自由に設立すべきなのか、これまで起こった話】
ここでは、わりと医学部などに状況が近く、まあまあスムーズに行った薬学部と、
大問題になった法学部を取り上げて、その状況を説明したいと思います。
@薬学部
当時から、薬剤師不足が叫ばれており、特に地方において、足りない地域が多くありました。
そうした需要を補おうとする動きもありましたが、都会では供給が十分なところもあり、すでに薬剤師資格をもつ人々からすると、薬剤師の供給が過剰になり、給料が下がるかもしれないので、反対もありました。
ここまで獣医学部の話にそっくりではないでしょうか。
実際には、薬剤師の供給が過剰にならないように、様々な政策がとられています。
まず、薬剤師の専門教育が諸外国よりも少ないということで、4年制から6年制への変遷が図られました。
これにより、一時的に、相当な薬剤師不足が起きました。また、時間的、金銭的にも薬剤師になるハードルが上がり、潜在的に薬剤師になりたい人の人数も減少していることでしょう。
次に、医薬分業を推進し、病院の中にあった薬剤部の一部が薬局に変わりました。
医療行為と薬を足した場合の点数(≒保険料(患者の支払額+税金))は、医薬分業を導入した方が上昇しています。つまり、彼らはほぼ同様の作業をしているものの、以前よりは少し潤っています。
さらに、ロキソニンなど一部の薬に関しては、医者にもらわなくても、ドラッグストアで売ることもできるようになってきました。その際にも薬剤師が必要になっています。
これらをみると、薬剤師の需要や給料は、制度当初心配されたほど、大きくは減っていません。
こうしたところをみると、コスト増など無駄が増えている部分もありますが、一部の薬は簡単に手に入るようになり、病院にいちいち行かなくても良い人が増えました。また、医薬分業により、残薬が少なくなり、薬をもらうときに薬剤師から話がある程度あるなど、薬に詳しくない人でもそこそこ有用な話が手に入りやすい世の中になっているとは思います。さらに、MRでも薬学部出身者が増え、医者に対して薬の説明をする際にも、以前よりも適切な説明ができやすくなっている、とも言えるかもしれません。
これらを良しとするか、どう見るか、ということになるかと思います。
A法学部
法学部については、アメリカなどの訴訟社会への変化を見込んで、法曹人口を増やすという理想のもとに、他のジャンルを学んだ人も受け入れつつ、高い合格率を保証することを目指す法科大学院を作りました。当初の想定では、法科大学院の数をそこまで増やす予定はなかったものの、実際には、どこの大学も法科大学院を作りたかったため、ドンドン多くの法科大学院ができていくことになりました。
※ご存知の通り、法学部については、もともと、法学部を卒業した人の多くが法曹界にいるということもなく、あくまで低い合格率の試験を通った人だけが法曹界にいくという仕組みをとっており、その点で、医歯獣薬学部とは大きく違います。
ところが、法科大学院が増えすぎた結果、高い合格率も維持できなくなりました。結果、法科大学院にいったものの、法曹界にいけない年齢が高い新卒者が増えました。最近は第二新卒という枠もできていますが、こうした人はまだまだ日本の会社、社会では受け入れてもらいにくいのが現状です。
また、当初の見込みでは、アメリカなみに増えるはずだった訴訟も、急に増えるはずもなく、弁護士の数だけ増え、弁護士の平均給与がだんだん下がってきました。所得の中央値で見ても、2006年の1200万円から、2014年の700万円へと激減しています。弁護士資格を持っていても、普通の企業に入ったり、隙間の案件を狙って借金の取りすぎの返還訴訟が流行ったり、行政書士の仕事を奪ったりしています。
そうした惨状をみて、法科大学院自体の人気が下がり、定員割れを起こすところが増え、次々と法科大学院が減っていっています。
プラス面としては、今まで目も向けられなかった借金の取りすぎ訴訟が増えたことにより、弱者対策にはなっていますし、一人当たりの案件が減っているわけですから、少しの案件でも弁護士は今までよりも親身に相談に乗ってくれたり、愛想はよくなっているでしょう。相談だけなら随分と安価なサービスもあります。
弁護士不足も解消されつつあります。地方においても、弁護士は少しは足りてきてはいるようです。が、地方においては、離婚訴訟など、特定の訴訟が多いようで、少し特殊な訴訟になると、わかる人がいなくて、たちまち困ります。
それでも、一昔前よりはだいぶましになっています。
これらを良いとみるか悪いとみるかということになるかと思います。
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【3 今後はどうすべきなのか、医師や獣医師の「需要と供給」とは何か。】
さて、政府としては、こうした流れを、医学部、歯学部、獣医学部にも起こしたい、例外をなくしたいと考えているわけです。
(船はちょっとわかりませぬ。。。)
医学部については、高齢化社会が進展し、医師不足が深刻なことから、医学部全体で毎年定員増にしています。また、東北に医学部を設置するなど、新設もしています。こうして、政府にたてつかずに、規制の完全自由化をまだ乗り切っているわけです。
歯学部については、すでにかなり深刻な定員割れを起こしています。
平均年収も相当減っています。
そもそも、主要な客である子供が減っているだけでなく、子供の虫歯率が激減しています。
http://www.garbagenews.net/archives/1868627.htmlhttp://style.nikkei.com/article/DGXNASFE0203G_S4A600C1NNMP00?channel=DF140920160919&style=1&page=2正直、ここから自由に歯学部を作れる、といっても増やしたい大学はあまりない気がします。
残ったのが、今回矢面にたっている、いままで全然定員すら増やしていない獣医学部というわけです。
これらの学部についても、規制緩和の流れの中で、薬学部や法学部のように、どんどん増やしていくのが良いのかどうか、ということを考えることが必要なわけですが、薬学部や法学部など多くの学部は、自由に大学側が学部を新設・廃止することで、数を調節しています。逆に、医学部、歯学部、獣医学部については、自由には新設ができず、資格を持つ限られた人だけがその業務を行うことができるわけです。逆に言えば、資格さえ持てば、そこそこの給料をもらえることにもなります。特に、役所や一部企業などでも需要のある医学部や獣医学部は食いっぱぐれにくいわけです。
獣医師でも東京にいてペットの診療をすれば、収入が少ないと言いますが、やりたいことをやっている時に給料が少ないことがあるというのは普通の職業からすれば、別に普通のことであり、その発想は特権階級の発想です。獣医師が地方に行けば、一部地方ではそこそこの人気職業である公務員にすぐなれるわけですが、なり手がいないなんて、随分とぜいたくな話です。
もしも、獣医師が多すぎるならば、獣医学部に入っても、後から試験で落としてもよいのです。仮に獣医師になれなかったとしても、動物の知識を持って、一般企業にいって、動物関連ビジネスを行ってもよいわけです(ペット用薬は昔からありますし、ペットホテルとか、色々なサービスも誕生しています。)。今のところ、飼い主一人当たりのペットにかけるお金が増えているため、日本のペット市場は縮小していませんし、中国のペット市場は急速に拡大しています。獣医学部新設に際しては、海外市場をターゲットに入れればよいだけであり、需要と供給を国内のみで考えるのはきわめて視野が狭いと思います。例えばヒアリの薬を作るにも動物の治験には獣医が活躍できるでしょう。
こうした新たな脅威が出る可能性もある中で、獣医師はどちらかというと「過剰気味」がよいんでしょうか。それとも「不足気味」がいいんでしょうか。
医師の場合は相当めぐまれています。医師資格があれば、更新もなく、逮捕などされても、ほとんど資格取り上げもなく、金銭的には余裕で暮らせます。しかし、医師人口自体足りず、かなり激務で働いている人も多いです。
中国などから、日本の医療行為を受けに来る人もいます。また、日本の医療関連ビジネスには、医師資格を持っている人は多くありません。もっと医学部の定員を増やし、医者を増やし、ごく一部の悪い医者や勉強をしない医者は資格をはく奪して医療業界から退出いただいて、良い医者を残し、また、日本の医療ビジネスを拡大するほうが良いという考え方もできます。
どちらかというと、日本では、医師不足だから、海外から輸入しよう、という発想になりがちですが、育てるのにお金がかかる医師については、どこの国も同じことを考えていて、特に途上国では国際間での取り合いになっています。だから、国境なき医師団が行くということもあります。途上国に生まれ、勉強して医師になっても働くのは給料の良い海外、ということも当然あるわけです。
近い将来、ITを使って、日本から遠隔地の富豪の手術はするけれども、日本に住む貧乏な患者はみてもらえない、という事態になるかもしれません。
そうした事態に備える意味でも、医師・医療技術の将来的な輸出も考えて、日本国内の需要を上回る数の医師を養成しておくこともよいのではないかと私は考えています。
また、医師の給料は多少減っても、全然いいと思っています。というか今は他職種に比べて高すぎます。
最終的には、こうした医療全体の改革につなげていくことが、学部改革のゴールであり、大事だと考えています。医療業界は自民党に議員を何人も送り込んでおり、最も大きな岩盤規制ですので、どこまでできるかはわかりませんが。
別の観点から、そもそもの話をすれば、男女共同参画社会が進み、子育てを男女で分担する場合には、一人当たりの労働量は減少するわけで、その分供給をしないと足りないわけです。女性が産休になったり、辞めたりするときには、もっと足りなくなるわけです。医師などは女性進出が結構多い職業であるため、きちんとそのあたりを踏まえた算定を行えば、それだけでも供給が足りなくなると思うのですが、現時点では、医師会や獣医師会側の需要算定を重視し、それを算定していないか軽く見ているのだと思います。ですので、計算上は需要と供給をあわせているものの、医師不足とか医師は長時間労働だ、とか叫ばれるわけです。見込みが甘いわけです。
医師が本当に足りていれば、夜中に病院をたらいまわしにされる、などは減るはずです。
我々は医師不足のあおりをすでに受けています。
このことからも、そもそも医師や獣医師側が主張している需要と供給の算定自体を疑う必要があると考えています。
政府の立場としては、需要と供給とか考えずに、作りたいところは自由に作らせる、という方針であり、それが良いと私は考えていますが、仮に、需要と供給を考えるにしても、ライフワークバランスをもっと厳密に考えたり、医療業界・獣医業界の将来のビジネス拡大まで考えれば、医療業界・獣医業界はもっと供給(=医師や獣医師)を増やさなければならない、と考えています。
【4 これから加計学園問題はどうなるべきか】
こうした流れの中に、今回の加計学園問題はあります。
安倍首相のお友達が加計学園の偉い人だという点、そしてそのプロセスについて、非常にえこひいきに見えます。その点で、安倍首相は倫理的責任を負うべきだと思っています。
しかしながら、手続きとしては、
a.現実性を担保するために、一つの業者にひとまず見積もらせてみることは通常の手続きとしても特段問題なく、
b.四国にのみ獣医学部がなく、学校の場所の近くに就職する傾向が強いという内閣府データも一定の合理性があり、
c.なにより致命的なのが、最終的に、京都産業大学は特区への参加を見送っている点です。
何があろうと、意地でも最後まで特区に手を上げていれば、全く状況が違うと思いますが、途中のプロセスは色々あるものの、最終的に申請しなかった以上、京都産業大学が選ばれる可能性は0です。
京都産業大学に無理やり申請を取り下げさせている、という明確な証拠でも出ない限り、政府の責任を問うことは難しいと思います。
調べればすぐにわかりますが、他分野では、申請を出したうえで争って、自らの主張を勝ち取っているケースもあります。
また、加計学園側に明確な瑕疵がないまま、政府側から申請を却下すれば、賠償問題になる可能性すらあります。
それはさておいたとしても、他の学部はほぼ自由に設置できるにもかかわらず、医学部、歯学部、獣医学部だけが、需要と供給のバランスが〜とかいって、自分たちの利権をいつまでも守ろうとしています。
それだけをマスコミも中心に流していますが、一体いくらお金を積まれているのでしょうか。
一部の学部、付属する業界だけ優遇するようなよくわからない規制をだんだん崩していった方がよいと思うのか、そのままで良いと思うのか、それともほかの学部・業界とあわせて自由化するのか、ということがこの問題の本質です。
よって、政府側の手続きややり方は良くないので、その点は十分責められるべきだとは思いますが、加計学園、一般社会側から見れば、市役所も文部科学省も内閣府も政府もみんな行政サイドであり、ある意味内輪の話になります。
それらは事業者としてみれば、関係のない話ですので、今のまま、加計学園に明確な瑕疵がなければ、獣医学部は予定通り作り、規制改革を実行すべきだと思っています。
これが、明確な理由もなく、グダグダになり、頓挫するようであれば、雰囲気で流されるどっかの国と同じになります。
逆に、加計学園だけでなく、他の学校もどんどん手を挙げてもらって、どんどん作ればよいと思います。それならば、別に特権にもなりません。
同時にペット産業などを拡張すべく政策を考えたり、獣医師試験を難しくするなど出口を狭めたり、専門教育を充実するべく6年制にするなど、色々な政策が考えられると思います。
ニュースをみても、こうした流れの話はせずに、最後のずるいところだけをずっと面白おかしくクローズアップするので、なかなか全体像がみえません。そろそろ一部だけをみるのは辞めてもいい頃かなと思い、この記事を書きました。
以上の理由より、私も今回の手続きなどについては、だいぶ良くなかったと思いますが、全体をみると、結果的には加計学園が獣医学部を作った方がよいと思っています。
また、こうしたことを政府がもっと説明すべきだと考えていますが、説明自体がうまくないことと、マスコミにより変に切り取られていることで、本質が見えていないことが非常に問題だと考えています。
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